社長っ、このタクシーは譲れませんっ!

 そこで、ふと頭に浮かぶ。

 ……プロポーズという福利厚生。

「はっ、社長っ」
と千景は、そこでようやく気づいて叫ぶ。

「私、プロポーズとかされたの初めてですっ」

「まあ、人生でそう何度もされるもんじゃないよな」
と言う武者小路の言葉には哀れみが漂っていた。

 生まれて初めてのプロポーズが、あんな適当なものだったからだろう。

「お前、告白されたのも初めてっぽいな」
と武者小路に言われ、

「いや、告白はされてませんよね……」
と千景は言った。

 よくわからない状況だ。

 プロポーズはされたけど、告白はされていない。