社長っ、このタクシーは譲れませんっ!

 いや、モテモテだったのは見ればわかりますよ。
 でも、話盛りすぎじゃないかなって思っただけです、と思う千景の前で、将臣は、

「お前も一緒に飯食いに行くか、武者小路」
と訊いている。

「なんで俺まで……」
と言う武者小路に、

「そこにいたからだ」
と将臣は言う。

 私へのプロポーズもたまたま、そこにいたからとか。
 たまたま、いつもタクシーで横に乗ってるから、とか。

 きっとその程度なんですよね、と千景は思っていた。

 なんせ、チョコ山積みの超イケメン様ですもんね……と思いながら、のそのそ財布を引き出しから出す。

「もう出るぞ、嵐山」

 ぼうっとしてんな、と言われ、

「すみません。
 今、ミキサー車の中でチョコが撹拌(かくはん)されて、巨大チョコケーキに生まれ変わってるんで」
と妄想をそのまましゃべってしまう。

 ダンプカーに積んでいたはずの大量のチョコが何故かミキサー車に放り込まれ、撹拌され、巨大なハートのケーキが焼かれていた。