結局、千景は猫を探さずに屋敷を出た。
将臣は千景に夕食をおごり、返してきた二万円を押しつけたあと、アパートまで送ろうとしたが。
千景は商店街の近くで、同じアパートの女性だという人と出会い、
「じゃあ」
と二人で帰ってしまった。
あっさりだな、と思いながら、将臣はひとり家に帰る。
嵐山はあの親に、趣味が合って、御しやすい娘だと思われ、気に入られたようだ。
それにしても、いきなり嫁にもらえとか言われても、と思いながら、早百合と連絡をとろうとしたが、とれなかった。
次の日の昼、ようやく早百合が電話に出たので訊くと。
「あらだって、あの子、顔も綺麗だし、スタイルもいいし。
愛嬌もあるじゃない。
ちょっとトボけてるけど、頭の回転も悪くないみたいだから、一緒にいて不快じゃないわね。
それに、いい孫が生まれそうじゃない」
孫……。
母よ、あなたは何故。
付き合ってもいない、ただ頻繁に同じタクシーで出社し。
日々、仏や猫の話を語ってくるだけの新入社員との間に生まれる孫を想定してみるのですか……。



