社長っ、このタクシーは譲れませんっ!

「じゃあ、行ってくるわ。
 将臣、千景さんに夕食をご馳走してあげるのよ。

 ごゆっくり、千景さん」
と言って出て行ってしまった。

 益岡は女主人を見送るため付いて行き、リビングに二人きりになる。

 千景は顔色が悪いまま、ぎゅっと肘掛けを握りしめているようだった。

「しゃ、……社長。
 私、どうしたらいいんですか。

 残りの一匹を見つけられなくなってしまいました」

 いや、心配そこか。

 っていうか、念願のあと一匹を見るのを諦めてまで、俺の嫁になりたくないのか、と思ってしまう。

「見つけても伏せておけばいいじゃないか」

 多少苛立(いらだ)ちながら、将臣は言った。

「え。
 でも……」
と千景が言いかけたとき、ニャーと可愛らしく鳴いて、扉から猫が入ってきた。

 千景は猫に会いたかったはずなのに目をつぶる。