社長っ、このタクシーは譲れませんっ!

 

 二日後。
 また寝過ごした千景はまたタクシーに乗っていた。

 うう。
 無駄な出費がっ。

 でも、入ったばっかりで遅刻するわけにも……と思ったとき、少し先の歩道を必死に走っている人がいた。

 目についたのは、その男がスーツ姿で猛ダッシュしていたからだ。

 駅の方角に向かい、走っている。

 バスに乗り遅れたのだろうか。

 街中だとバス、バンバン走ってるけど。
 この辺はそうでもないもんな。

 大変そうだな。
 駅まで乗せてあげたいけど。

 駅行ってたら遅れるし。
 知らない人に、いきなり、一緒に乗りませんかって、声かけるのもな。

 うーむ、と思ったとき、タクシーがそのスーツで走る男の横を通った。

 見るんじゃなかった……社長だ。

 社長の家、この辺なのかな? と思いながら、少し迷って千景は言った。

「運転手さん、すみません。止めてください」