社長っ、このタクシーは譲れませんっ!

 私に? と千景が見上げると、
「すまないが。
 今日、暇なら、一緒に母の家に来てくれないか?
 お前に会いたいと今連絡が入ってきて」
と言う。

 え?
 猫屋敷からお呼びが? と思った千景はつい、
「猫ちゃんたちからですか?」
と訊いてしまう。

 他に自分を呼びそうな人間に心当たりがなかったからだ。

「……莫迦か、お前は。
 猫が、
『アラシヤマに会いたいニャ』
とかスマホに電話してくると思うのか」
と言った将臣に、千景ではなく、武者小路が突っ込んだ。

「猫がアラシヤマ呼びか。
 そこは『チカゲちゃん』とかじゃないのか」

 いや私は猫が電話かけてくることよりも。

 社長の声で言われた
「会いたいニャ」
と武者小路さんの声で呼ばれた
「チカゲちゃん」
の方がとりあえず、違和感アリアリなのですが……と思う千景に将臣が言った。

「お前に会いたいと言ってきたのは、うちの母親だ」
「え?」