社長っ、このタクシーは譲れませんっ!

「おはようございます。
 いいんですか? あの方」

「ああ、いいんだ。
 まったく、いきなり朝帰ってきたと思ったら、いちいちうるさい。

 お前もああいう親にはなるなよ」
と将臣は渋い顔をして言ってくる。

 えっ、と千景は叫び、運転手さんも叫んだ。

 思わず、振り返る。

「今のお母様なんですかっ?
 お若いですねっ。

 愛人の方かと思いましたっ」

「……俺の愛人はお前なんだろう、九条真実的には。
 俺はお前の家も知らないんだが」

「そうなんですか。
 あの方が猫ちゃんたちのご主人様なんですね~」
とまだ後ろを振り返っている千景に、将臣は、

「今の俺のセリフはスルーか」
と毒づいたあとで、

「今ではほぼ、俺と益岡さんが主人だがな」
と付け加えてくる。