社長っ、このタクシーは譲れませんっ!

 ずっと黙々とパソコンに向かっている、仙人みたいな前倉についで、浮世離れしてそうな武者小路が、そんなことを訊いてくるのが不思議だった。

「えーと、どうって……?」

「やっぱり、スカしてたか?
 鼻持ちならない感じだったか?

 こいつ、調子こいてんなって感じだったか?」

 ……何故、マイナスな感想しか選択肢にないのですか。

「いえ……謙虚な感じでしたよ」

 私からタクシーを奪おうとしたり。

 私の容姿を罵ったり、ちょっとあれなところもありましたが。

 他の方には丁寧に応対されてましたし。

 美味しいお菓子買ってくれましたしね、と美味しいお菓子ですべてを帳消しにしながら、千景は思う。

 ふうん、と言いながら、武者小路は珈琲を啜っていた。

 他の人のデスクにもお菓子と珈琲を置いておくと、此処に入ったとき、秘書の人と間違えた温厚で美人なお姉様、坂巻(さかまき)トモエが戻ってきた。

「えーっ。
 このお菓子、千景ちゃんが買ってきてくれたのっ?

 ここ、評判なんだけど。
 会社帰りに寄ったら、いつも売り切れちゃってるのよね~」