社長っ、このタクシーは譲れませんっ!

「じゃあ、許嫁じゃないんですか?」
と訊いてみたが、将臣は顔をしかめ、

「ところがそうとも言えない」
と言う。

「俺が知らなかっただけかもしれない。
 そういえば、幼い頃、じいさんたちがやけに彼女と会わせようとしていた」

「そうなんですか。
 では、ぜひ、真実さんに、おうち教えてあげてください」

「……いや、何故だ」

「だって、真実さん、なんか打ちひしがれてましたよ。
 可哀想じゃないですか」

「……お前の立ち位置がよくわからないんだが。
 お前、彼女に罵られたんじゃないのか?

 まあ、どのみち、俺は彼女の連絡先を知らないから……」

「あ、大丈夫です」
と千景はお菓子を小脇に抱え、スマホを取り出した。