社長っ、このタクシーは譲れませんっ!

「そうか。
 泥棒猫だったな。

 俺の頭の中では猫がほっかむりをしたり、お前がほっかむりをしたりしていた」

 何故、私がほっかむり。

 私が猫を泥棒しようとしているのですか。

 私はただ()でたいだけなんですけど、と思いながら、千景は、

「……おひとついかがですか?」
と将臣にマカロンをひとつ渡そうとした。

 自分だけがお菓子をたくさん持ってて申し訳ないな、と思ったからだ。

「いや、いい」
と言った将臣に訊いてみる。

「あの~、社長は何故、許嫁の方にご自宅を秘密にされているのですか?
 なにかすごい秘密でも?」

「……なに身を乗り出してんだ。

 ご期待に沿えなくて申し訳ないが、なにも秘密なんかないぞ。
 っていうか、九条真実が俺の許嫁というのも初めて聞いた」