社長っ、このタクシーは譲れませんっ!




「嵐山」

 総務から出てきた千景は将臣に呼び止められた。

 将臣は、ん? という顔で千景の手にあるものを見る。

「なんだ、その山のような菓子は」

「なんかみんながくれたんです。
 可哀想にって」

 なにが可哀想なんだろうな、と小首を傾げる千景に将臣が言う。

「猫泥棒事件のせいか」

「……泥棒猫では」
と横を通った千景の同期の吉峰が、ぼそりと言った。

 うっかり社長の間違いを指摘してしまった吉峰は、そこから走って逃げる。

 そちらを振り返りながら、将臣が言ってきた。