社長っ、このタクシーは譲れませんっ!

 武者小路さん……、確かに痩せたら、すごいイケメンなのかもしれないが。

 この容赦なく突っ込んでくる性格のせいで、きっとモテない……と千景は失礼なことを思っていた。

 だが、そこで、待てよ? と気づく。

「そうだっ。
 八十島さんはご存知ですよね? 社長のマンション」

「そりゃまあ、知ってるが……」

 教えろとか言うなよ、という顔で下がっていく八十島を見ながら、真実が言う。

「まあっ、この方は将臣様のマンションをご存知なのですかっ?
 ということは、私たちより、将臣様に愛されてらっしゃるのですねっ」

「……愛されてはいません」

 どんなときも冷静な八十島は、やはり、ここでも冷静に言い返していた。

「わかりました。
 将を射んと欲すれば先ず馬を射よ、ですわ。

 まず、あなたの信頼を勝ち取り、将臣様の住所を手に入れて見せましょうっ」

「……いや、直接、社長に訊いてください。
 あなた、ほんとに社長の許嫁なんですか」
と八十島が呆れたように言っていた。