電車で先に会社に戻った千景は、半地下にある社史編纂室に戻ると、室長の前倉に、今、戻りましたと報告した。
好々爺といった感じの前倉はスチール製の長く湾曲したツボ押しで肩を押しながら笑って言ってくる。
「あとで講義の内容、まとめて提出してくださいね」
はい、と千景は頭を下げた。
編纂室の隅にある紙コップに珈琲を入れ、評判の焼き菓子とともに配る。
将臣くらいの歳の、顔は整っているが、ちょっと小太りな武者小路がパソコンを打ってる横に、そっと置く。
武者小路は振り返らずに、
「セントラルホールでの講演、例の新米イケメン社長と行ったんだって?
どうだった?」
と訊いてくる。



