社長っ、このタクシーは譲れませんっ!

「新入社員がタクシーで横づけとか、ちょっとあれなんで」

「じゃあ、近くで降りろよ……」

 誰が横づけしろと言ったと言われる。

 ははは、と千景は笑って、また断る。

「いえいえ、ほんとうに結構です。
 私はお土産でも買って適当に帰りますから」

「待て。
 ここ、会社からそんなに遠くないぞ。

 何故、土産を買う」

「いや~、新入社員の分際で、いきなり仕事抜けて出張とかさせてもらっちゃったんで、編纂室のみなさんに」

 社史編纂室の人数を数えながら、千景はロビーで売っている、駅にありそうな土産物を見る。

「あ、『セントラルホールに行ってきました』っておせんべいがありますよ」

「水族館の土産か……。
 欲しいか? それ」
と将臣には言われたが。

 いや、ちょっと楽しいではないですか。
 ねえ……?