社長っ、このタクシーは譲れませんっ!

 


 聞いてみれば、社長は社長で系列会社の一社員として頑張っていたらしいのだが。

 まあ、でも、まだまだ若いよな、と思いながら、千景はメモを取りながら講演を聞いていた。

 ……はずだった。

「お前、寝てたろ」

「いいえ。
 聞いてましたよ」

「途中から目を閉じてたぞ」

「目を閉じて聞き入っていたのです」

「いや、途中から俺の肩に寄りかかって寝てたぞっ」

「ラブラブカップルのようでしたよね。
 ……一番後ろの席でよかったです」
と八十島がやれやれといった感じで言ってくる。

「でもちゃんと話は聞いていましたよ。
 睡眠学習です。

 大丈夫です。
 英検も睡眠学習で突破しましたから」

 顔をしかめ、もういい、と言った将臣は、
「俺はこのあと会議だから、お前は帰れ。
 タクシー呼んでやるから」
とちょっとだけやさしいことを言ってくれた。

 だが、千景は電車で帰るから結構です、と断る。