少し迷ったけれど、とりあえずA5サイズで探すことにした。
何色のノートにするか、迷う。
しばらく考えてから、黄色い表紙のノートを手に取った。
昔、誰かが言っていたっけ。
“黄色って希望を感じるのよね”って。
その時は何の根拠があるのかしらって思っていたけれど。
(今は何だっていいから、すがりたいのよ)
ノート片手に病室の前まで帰ってくると。
娘達の鼻をすする音が聞こえてきた。
私は思わず扉に伸ばした手を、引っこめてしまう。
「母さんを頼んだからな」
落ち着いた、史郎さんの声がした。
「……うん、わかってる」
まるで小さな子どもみたいな、娘達の返事。
視界がぼんやり揺れた。
泣きそうになるのを、必死でこらえる。
上を向いて、指で目頭をおさえた。
娘達が帰って。
何を話すわけでもなく、史郎さんと病室のテレビを観ている。



