「おい、ちょっと」



史郎さんが私を見て手招きした。



「何?」

「いいから、ちょっと」



仕方なく史郎さんのそばに寄る。

なぜか小銭入れを渡された。



「?」

「ここの売店で、小さなものでいいから、ノートを買ってきてくれ」

「今?何に使うノート?」



史郎さんはそれには答えず、
「売ってる中で、気に入ったものを買ってきてくれ」
と、言った。



ついていこうか?と、行恵が席を立ったけれど、大丈夫よ、とだけ言って、私はひとり病室を出た。

明るく笑っている娘達の声が、廊下にまで聞こえている。

それが救いだなと思う反面、よく笑えるわねと、娘達に対しても薄暗い気持ちになる。






病院の売店は地下1階にある。

階段のすぐそば。



私は店内に入り、文具コーナーまで行く。

棚には色とりどりで、様々なサイズのノートが並んでいる。



(A 5サイズって、小さい内に入るかしら)