「じゃあ、私が書く。だから史郎さんは読んで。毎日毎日、私が書いたものを読んでくれるだけでいいのよ」
出来るだけ明るい声で言った。
なのに。
私の頬には大粒の涙が次々とこぼれていく。
(泣きたくなんかないのに)
そう思えば思うほど。
私は涙をおさえきれなくて。
しゃくりあげて泣いてしまった。
史郎さんのベッドに顔をうずめるように泣いていると。
「足跡」
と、史郎さんが呟いた。
それから私の頭を撫でて、こう続けた。
「交換ノートは、オレと君の、足跡みたいだな」
『足跡』。
そう。
そうね。
振り返ってみたらきっと、私達の歩いて来た道を示してくれる。
それから。
夕方になって。
正代が病室に来て、久しぶりに家族4人で話した。
「母さん、お姉ちゃんと私でまだここに居るから、今日はもう帰っていいよ」



