市民病院。

史郎さんの病室。



史郎さんはまた、高熱をだした。



「熱、なかなか下がらないわね」



行恵が不安そうに私を見る。



「そうね、少しでも下がるといいんだけど」



私は行恵の肩をさすった。



史郎さん……。

ついこの間まで一緒に笑っていたのに。

今ではこんなに苦しそうに眠っている。



「父さん、大丈夫よね?だってまだ3月よ?夏まではまだまだ時間があるものね?」

「……」

「ねぇ、母さんっ」



何も言わない私に、行恵は(じれ)ったそうな顔をした。

その顔を見て、小さな子どもの頃と変わらないな、と思った。



どんなふうに返事をすればいいんだろう。

大丈夫よ、と勇気づけることができたなら、どんなに良かっただろう。






……疲れてしまった。






看護に対してではない。

毎日続く病院通いに対してでもない。