戒がいくら睨み付けても、飄々とするシンにはなんの効果もないようだ。

 ただ、戒の言う契約とはなんのことだろう。

 あの対価のことを言うのだろうか。しかし契約と呼ぶには、少し形態が違うような気がする――


「争っている場合かい? 日暮れるよ」

「うん、そうだね。道祖神さんの言う通りだ。二人とも揉めるなら、私1人で行くから」


 今わからないことを考えていても、仕方がない。

 時間がないのだから、さなちゃんのことだけに集中しないと。

 シンと戒は私の顔を見たあと、それ以上なにを言うこともなく歩きだした。