「……おっ。お?」

「えっなに?なに?どしたの?」


先に部屋に入ろうとしていたよるくんが立ち止まった。


どんっと壁のような背中にぶつかってわたしも止まる。






「やべぇ、警察呼ばれたわ」

「うそ!ごめんよるくん……どうしよう」


「大丈夫大丈夫、俺が説明するから。あさひは部屋で待ってな」

「わ、わたしも行く……!」


「ほーん。そんなら元演劇部の実力とやらをみせてもらおうかね」

「照明スタッフだったんだけど、なにしたらいい?」

「よっし、潔くふたりで謝りに行くか」




ぴーんぽーん、と無機質なチャイムが鳴る。


思わずびくりとしてしまったわたしに、部屋に入っていたよるくんが手を伸ばしてくれる。




「あさひ、お前は?」




ぱちぱちって、彼の周りに煌めいた透明な粒。


一瞬だけ胸が苦しくなった。


でもほんとうに一瞬だけだったから、たぶん気のせいだろう。



それに……それは、いやな苦しさじゃなかった。






「ひとりじゃないっ……」


ベランダから一歩踏み出して、そこに手を重ねたわたしを





「せーかい」


口元でゆったりと弧を描いて微笑んで、掬いあげてくれた








────────よるはもう怖くない。







『NIGHT&KNIGHT』end.