あれだけ長くて怖かった夜が、ほんのすこしだけ変わった気がした。 ううん、わたしが見えてなかっただけなんだ。 いろんなところから息遣いを感じる。 よく見ると真っ黒じゃない、月星の浮かぶ空から。 向かいの家から、同じアパートから。 そして、目の前のよるくんから。 「大丈夫だ。あさひはひとりじゃない」 「うん、……うん」 ぎゅっと目をつぶって、よるくんに抱きつく。 そうしてわたしは、しばらく子供のように泣いた。