次の日、同僚の代わりにとある営業先へ向かった。

以前買い物をした渋谷の雑貨屋だった。

あの時の店員もいた。

向こうは僕に気づかなかったが、僕はすぐに気づいた。

それもそうだ。

彼女は僕と違って毎日何百人もの客を相手にしているのだから。

彼女は商品のカタログを一生懸命見ていた。

僕が挨拶をすると裏まで案内してくれた。

中に入ると責任者らしい男性が1人と女性2人がいた。

事務所内は整理されており、商品の在庫もさほどなかった。

そこはセレクトショップなのだ。

責任者の男性に事情を説明してから作業を始めた。

途中で1人の女性が店頭に行ったり来たりを繰り返していた。

作業を終え、いつものように動作確認、操作方法の説明、サインをもらった。

帰り際に店頭の彼女にこの前買ったまな板がよかったと伝えると、彼女は少し考えて僕のことを思い出したようだった。

女性客が多い上に男性でまな板を買う人も珍しかったようだ。

あのまな板はどうやら彼女が選んで仕入れたようだ。

彼女は喜んでくれた。

セレクトショップならではのやりがいもあるのだろう。

帰り際、前と同じように素敵な笑顔で見送ってくれた。

葉月から連絡がきたのは翌週の土曜日の夜だった。

明日の夜に会えるかとのことで、僕は会えると伝えた。

僕は平日は営業に力を入れ土日は書類整理に力を入れる習慣になっていた。

知らず知らずのうちにいつでも葉月と会えるようにしていたのかもしれない。

日曜日の夜は梅雨も明け、気温も上昇していた。

我々は駅で合流し、いつものように居酒屋に行った。

ここでのお通しは揚げ出し豆腐だった。

いつものように仕事のことやプライベートのことをお互いに話した。

昨日の雑貨屋の話をした。

彼女はきっと運命の人だよと真剣な顔で言ったが、僕は何も答えなかった。

その後、彼女の部屋に行った。

お互いに翌日が休みだったからだ。

ミーが僕を出迎えてくれた。

もしかすると僕はミーに会いたいから来てるのかもしれない。

「あなたには懐いているみたい」

彼女はそう言って着替えるために寝室に行った。

「僕は君のことも葉月のことも好きだよ。今日も大人しく葉月のことを待っていたんだね」

ソファーに座ると僕の膝の上に乗りしゃがみ込んだ。

彼女は冷蔵庫から缶ビールを取り出し僕の前に出した。

いつかこんな生活も終わるのだろうと心の中で思っていた。