『……キス、してもいい?』
『いまさら、聞く?』
『うん。久野もしたいって思ってくれてるかどうかが、いちばん大事だから』
『確かに、わたしはしたくないって思ってるのになあって思いながらのキスだとしたら、一大事だね』
『だから、確認。……ね、どう?』
あまえるようにきいてきた、鼻にかかったあざとい声。なんて。緊張で震えていたから、いま思い出してもかわいいなと思う。
『──……あのね、』
『うん?』
言いたい。言いたいけれど、これを、どういう顔して言ったらいいのかわからない。
こんなに近くても、恥ずかしくても、目をそらせないでいるのに。
目を合わせながら言うなんてもっと無理で。
『なんでもない、から、して』
まぶたを閉じながら急かした。
それがわたしたちの最初のキスで、というか、わたしの人生ではじめてのキス。



