彼氏へ。わたしの爪と皮膚はしおりにしないでください。




「えっ、……えっ、久野? サン?」

「久野だけど」

「あ、うん。そうだね」

「……」

「そうだね? って、何?」

「あんたが言ったんだけど……」

「あっ、そっか」



……なんか面白いな。



はじめてのキスは星畑から、この部屋で。



ひさの。やわらかくわたしのことを呼んで、寸前まで近づいて、『あのさ』



何? と首をかしげながら、この至近距離でもおそろしいくらいに顔が整ってやがるなあ、と思うくらいはした。たぶん、思い返せば、ただの照れ隠しでしかない。