と同時に気付いてしまう。今の自分はどれほど無力であるのかを。

 伴侶となったあかつきには、四国の法に(のっと)って婿であるレインが次期ナフィル王に、王女のアンは次期王妃として、共にリムナトとナフィルの発展に努めようと(こころざし)を新たにしていた。

 そんな自分がレインの障害となり、()つ自国の未来を未来の夫に背負わせている……反面彼も苦悩しているのだろう、自国が未来の妻とその祖国を(おびや)かしているという現実に。

「……リムナトのことが終息次第、イシュケルには今回の報告書とこれまでの関係を継続する旨の宣言状を持たせて、早急にナフィルへ帰すつもりだ。もちろん護衛もたっぷり付けてね。だからイシュケルのこともこちらのことも、どうか心配しないでいて」

「……はい」

 それでも懸念は数多(あまた)存在した。自分がどんなにか威厳のある国王代理であったらと、アンは幾度願ったことだろう。

 けれど今はまだ二十(はたち)を数年過ぎたばかりの若輩者で、ついでに言えば迫力という言葉には程遠いタダのか弱い女だった。

 父が倒れてからこの(かた)ずっと気掛かりだったのだ。自分がナフィルの民を進むべき方角へ牽引(けんいん)していけるのかと。

 そんな矢先のこのザマだ……不甲斐ない自分に出来ることは、レインに任せて待つことだけなのか? ただ立ち尽くして唇を噛むしかないのか?