「王家の子供はいずこも孤独だ……従兄のネビアは僕に対して、少しの関心も示したことはなかった。周りは父に仕える大人の従者ばかり……そんな独りぼっちの寂しい僕に、君の存在は生きる喜びを与えてくれた。何の夢も希望も持てなかった自分に、神様が遣わせてくれた天使に違いないと思ったんだよ……」

「レイン……」

 ──レインもあたしと同じ想いで生きてきただなんて──。

 遊び相手が侍女のフォルテ以外にいなかった幼き日々、アンにとってもレインはまさしく空から舞い降りてきた天使だった。

 この存在にどれだけ救われてきたか知れない。

 彼がいるだけで彼女は明日を生きる活力を得られた。

 共に楽しい日々を過ごし、共に笑い合い、いつしか共に国を()べる夢を見て──レインがいたからこそアンは淋しい夜に耐え、次の朝もまたその次の朝までも、待ち遠しく感じられたものだった──。

 溢れる愛おしさに、患部に触れぬよう柔らかく抱き締める。

 レインへの想いに熱を帯びた頬を寄せて、アンは唇を噛み締め嗚咽(おえつ)(こら)えた。