あたしだけが、知っている──。



 砂と岩に囲われた我が祖国では、唯一あたしだけが知る音だ。

 世界で一番清らかで(はかな)げな韻律(メロディ)

 心奥(しんおう)に染み透るその流麗な響きは、民を生かす源となる。



 そう……水の──反響(リフレイン)



 寄せては返す白い岸辺に、震える指先を(ひた)す。

 絶えることのない水の流れは、あたしを優しく包み込んだ。

 ひんやりとしているのに、不思議と感じる温かな想い。

 きっと貴方の愛情が注がれているから、なのね。



 水面(みなも)に映る自分の(おもて)に、貴方の笑顔が重なった。

 だからあたしは枯れたりなどしない。

 たとえこの水が、いつの日か尽きようとも──。