「雫ちゃんいないとつまんない」



ストローを啜って、パックのカフェオレを飲み切ったハル。

食べていた菓子パンの袋と一緒にコンビニ袋に詰め込んで、「ゴミ捨ててくるぅ」と部屋を出ていった。自由人だなぁ。



「慣れてきたら、ハルも落ち着くんやろけどなぁ」



人間って生き物は、徐々に慣れることを憶える。

ハルもそのうち雫ちゃんのいない生活に適応していくんだろうとは思うけど、今は荒れてるハルも悪くないなぁって俺は思う。



だって、そんぐらい雫ちゃんのこと大事に思ってるってことだろ?

本当に好きじゃないと、そんなこと思わねえじゃん?



「……静。

念のため、ハルの様子見といて」



スマホの液晶を綺麗な指先で撫でながら、越が静に声を掛ける。

特に文句はないようで、静は「わかった」と一言返事した。




「……じゃ、お昼も終わるし戻るかあ」



灰高は、治安的にはまあまあ悪いけど。

俺ら朝顔の幹部はなんだかんだ真面目だから、一応授業にはちゃんと出てる。時間的に、ハルもここに戻ってくることなく教室に行くだろうし。



「もうそんな時間なんか。ほな行こか」



椅子から立ち上がって、ぐっと伸びをする鼓。

それに続くようにして各々立ち上がり、電気を消して第2音楽室を出る。



「はやく帰りてぇなー」



「兼、あとで倉庫ついたらゲームの続きせん?」



最近俺と鼓を筆頭に、下っ端も含めてハマってるスマホのバトルゲーム。「ええよ」と返せば「なんで関西弁やねん」と鼓に笑われた。

いつも通り、くだらないやり取り。……そこに雫ちゃんがいないと、やっぱりちょっと、寂しい。