空気を揺らす、綺麗なその声。

俺らが思わず彼女を見てしまったことでハッとしたらしい雫ちゃんは、「仲良さそうだなって」と取り繕うように発した。



「暴走族だって言うから、ちょっと警戒してたのに。

みんな普通に話してるから、警戒してるわたしが馬鹿みたいじゃない」



「まあ、俺らもずっと喧嘩とかしてるわけじゃねーしな」



「……でもあなたからタバコの匂いがするわよ。

さっき教室で腕を掴まれたときに、気になった」



「……タバコ?」



「げっ……」



……よく気付いたな。

確かに快斗は彼女を拉致する前、タバコを吸ってた。そしてそれを言われた快斗が、顔色を悪くした理由はひとつ。




「快斗。

まさかとは思うけど、校内で吸ってないよね?」



こういうことに人一倍口うるさい稜介が、怒らないわけがないから。

誤魔化そうとしてはいるけど、ポケットの中を調べられたら一発だ。



「吸ってねーよ」



「なら、そういうことにしといてあげる。

やめろとまでは言ってないんだから、校内で吸うのだけは本当にやめてね」



「……わーってるって」



誰にだって事情はある。

稜介も、それをわかってない訳じゃない。



「ごめんね、ゴタゴタして。

俺は井瀬谷 稜介。よろしくね、雫ちゃん」