わたしと越は、恋人同士だ。

だからみんなが知らない、ふたりだけの会話だってあるわけで。これももう、話し合って決めたことだ。



「住んでもらうって……

雫ちゃんひとりで南に行かせるつもりかよ!?」



兼が、越に食い掛かる。

普段賑やかだけど真剣な場でそんなことをしない兼のその行動は、きっとわたしを心配してくれていて。



「兼、大丈夫だから」



「でも、」



「確かに、ひとりで行くなんて心細いし寂しいけど。

越が"俺らじゃ無理"って言うんだから仕方ないでしょ?」



7代目幹部候補。

越を含むこの5人は、すでに南だけではなく彼岸花を含む北側に名前と顔が知れてしまっているらしい。だから彼等がもし北に忍び込むようなことがあれば、一発でバレてしまう。




「でも、雫ちゃんだって結構長いことここに出入りしてるし……

ほんとに大丈夫なのぉ? ハルしんぱい」



「東さんが、そんな隙を見せる男に見える?」



うるうると大きな瞳を潤ませるハルちゃん。

わたしも朝顔に頻繁に出入りしているし、正直顔が割れていそうなものだけれど。



「雫の情報は、100%北には漏れない。

朝顔に女が出入りしてることは、東さんが完全に隠してるから、南の幹部以上しか存在を知らない」



「、」



「しかもチームごとに少しずつ言い方を変えて伝えてある。

だから万が一……億が一、どこかから朝顔に出入りする女の話が漏れた際には、どのチームが裏切ったのか一瞬で分かる徹底ぶり」



それは越の話を聞いた東さんの動きじゃない。

わたしや朝顔のメンバーに何か危害を加える相手が出てこないよう、わたしに出入りしてもいいと許可を出してくれたその瞬間から、東さんがやってくれたことだ。