「ごめん、ちょっとお手洗い寄ってもいい?」



「ああ。待ってる」



ショッピングモールを見て回り、ランチも終えて、さらにお店でショッピングなんかを済ませたあと。

お茶でもする?という会話をしてから、彼に断りを得てお手洗いに立ち寄る。



「……あ、」



個室から出る直前、思い出してスマホを確認してみるけれど。

……越から連絡なんて来るわけないわよね。



鼓からは『ファイトやで!』ってメッセージが来てるけれど。

これには帰ってから返信すればいいか。



咲ちゃんから、『今日しずくん来ないのー?』というメッセージも来ているけれど、まあ、いま連絡して電話が来ても面倒だし。

稜くんあたりは、まつりと一緒であることも知ってそうだし。




個室を出て手を洗ったあと、鏡の前ですこし髪を整えて。

お手洗いを出ると、離れたところにいるまつりが耳にスマホを当てて誰かと話しているのが見えた。



最近よく電話してるけど、誰なんだろう。

いつもは旧図書室で電話するのに、この間はわざわざ出ていってたっけ。



「わ、大丈夫ですか?」



「大丈夫ですっ、ごめんなさいっ。

ありがとうございます」



彼のところへ向かう途中。

すれ違う寸前で同い年くらいの女の子が手に持っていた袋を落としたから、咄嗟に屈んでそれを拾う。



手渡そうと腰を上げた時、白いワンピースを身にまとった彼女は、ふわりと可愛らしく笑って。──その瞬間、なんだか嫌な予感がした。



「──東山 雫さん、ですよね?」