炭酸水に口をつけて、越はため息をつく。



「……あの女は魔性の女だよ」



「ほう。その心は?」



「見た目が良いのが一番。仕草や言動には無意識に自分に好意を抱いてるんじゃないかと思わせる素振り。

しかも実際、クソ優しい性格のせいで恋愛感情じゃなかろうと相手に好意を抱いてる。だから男側は勘違いさせられて、突き放せないところまでワンセット」



「……それ自分の体験談ちゃうの」



あ、睨まれた。

でも実際そうやろ。雫ちゃんと出会ったとき、越は欲求満たすためだけにその容姿をフル活用していろんな女に手出してたけど、彼女だけは違った。



最初から惹かれてた。

じゃなきゃ東さんに直談判もせぇへんやろうし、その日に家に連れてくなんてこともありえへんやろ。




「ほかの男もまんまと引っ掛かってんのやろなぁ」



「あの魔性っぷりは本人の自覚ないからね」



「そう思うと、兼とか静とかは冷静やん」



「ああ見えて兼は慎重派だし、静は恋愛とか興味ないからね。ふたりとも仲間として雫のこと好きだろうけど。

関係なく好きになってんのはおまえだけだよクソ野郎」



「なんでや!

俺雫ちゃんのこと好きなんて言うてへんやん!」



「付き合いの長さナメんな」



雫ちゃんのことめっちゃ好きやん。