心配。その言葉に(かこつ)けて、心を縛ることだってある。

柳議員の場合はそんなふうに生ぬるい言葉で子どもたちを縛ったりはしなかったけれど、前者の場合、いくら言い返したところで"ただの反抗期"と親の良いように捉えられてしまうことも、少なくはない気がする。



「心配しなくても大丈夫だっての。

つーか聞いてんだろ、ばあちゃんから」



「だめよ。

お義母さんはあなたに甘いから、何やっても"快斗はいい子にしてる"としか言わないんだもの」



なるほど、快斗はおばあちゃんと暮らしてるのね。

……っていうか、連れてくるならそれくらいの事前情報は教えてくれたっていいのに。



彼女なのに何も知らないって思われちゃうわよ。



「遊んでばっかりなんじゃないでしょうね。

まったく。勝手に髪まで染めちゃって……」



呆れたようなその声は、なんとなく、わたしにも刺さった。

……うちのパパもママも、そんなことわたしには言ってこないけど。




「似合ってるし、いいんじゃないですか?」



ぽろっと。

本音が、口を突いて出る。



「もちろん、気持ちはわかりますけど。

嫌々大人しくしてるより、好きなように好きなことをして楽しそうな快斗の方が、わたしは好きです」



「そう、ね。それはわたしだってそう思うわ」



「勉強もあんまり表立って頑張るタイプじゃないけど、実はこっそり真面目にやってるのも知ってます。

快斗の性格を考えたら、そうやって頑張ってるところを誰かに見せるのがすごく嫌なタイプだと思いますし」



たかが1ヶ月。されど1ヶ月。

けれどわたしは、この人のことも、彼岸花のことも、何も見てこなかったわけではない。



「誰かに指示されるのが、嫌なだけで。

……自分で考えて動けないような人なら、あんなに友達や後輩たちに慕われたりしないと思うんです」