「良いじゃねーか。

このまま立ってたら欲に飢えたクソ野郎共がうじゃうじゃ釣れそーな格好で」



「わかった、帰るわ」



「待て待て待て、冗談だっつーの」



手を握って引き止められ、仕方なく動きを止める。

付けてきた細身のチェーンの腕時計が日光をきらりと反射した。ワンピースにカーディガンなんて安牌な格好を選んできたけど、パンツスタイルの方がよかったかな。



「んじゃ、時間ねーからとりあえず向かうぞ」



「はいはい。仕方ないわね」



改札に近づくと、「ん」と手渡される切符。

事前に快斗が用意しておくと言ってくれていたものだ。ありがとう、とお礼を言って、受け取る。




「……それで、具体的に何すればいいんだっけ」



改札を無事に通り抜け、ホームで電車を待つ。

数分後には当然のように電車が到着する。さすが都会。北の方はダイヤがここまで分刻みじゃなかったわよ、なんて思いながらそれに乗り込み、声を少し潜めて快斗に尋ねた。



「あー……美高に進学して、ふざけて遊んでばっかりだと思われてんだよ。

お前、一応人並み以上に頭良いだろ?だから、見た目がどうとか関係なくちゃんとやってるっつーのをだな」



「要するに。

口うるさい両親のこと黙らせたいのよね」



「……そこまでは言ってねーけど。

うちの両親は自分が正しいと思ったら理屈曲げねーから、お前に嫌な思いさせる可能性だって、」



「それでもわたしを呼んだってことは、

それくらい両親に干渉されるのが嫌なんでしょ?」



わたしだってその気持ちはわかる。

まあ、うちの両親はかなりわたしを好きなようにさせてくれてるんだろうとは思うけど。