◆ side咲耶
「おはよう、みんな」
連休3日目。
朝からまつりんと一緒に倉庫に来たしずくんは、ふわりと綺麗な笑みを浮かべてみんなに挨拶してくれる。その瞬間、空気が浄化された気がするのは彼女の持つ柔和な雰囲気のおかげだ。
「おはようございますっ、姫!」
「姫、なんか綺麗になりました?」
みんなしずくんのこと大好きだなぁ。
もう既に下っ端はみんなしずくんの虜だ。……まあ、ぼくらのトップがあれだけ惚れ惚れしてるから、仕方ないっちゃ仕方ないんだけどー。
「元から綺麗だろ」
まつりんがしれっとそんなことを言うから、何故か下っ端メンバーまでが赤面してる。
……まつりんって性別問わず好かれるけど、そのうち本気で告る人とかで出て来そうだよね。男で。
「なに朝からイチャついてんだよ」
ダルそうにため息をつくかいくん。
かいくんが方向音痴じゃなかったら、昨日ぼくの代わりにしずくんの家に行ったのはかいくんのはずだ。
もし、そうなってたら。
「イチャついてないわよ。……稜くんと優理は?
っていうか、なんで珍しく快斗も咲ちゃんも下にいるの?」
色々あったのかなー、と思ったり。
まつりんだって、しずくんのことが心配で予定を切り上げて帰ってきたのは本当だろうけど、家にいたのが僕じゃなかったら、もっと機嫌が悪かったと思う。
生憎、ぼくは恋愛とか見てる方が楽しいタイプで。
そういうのを禁じられて育ってきた上に、別に誰かに惹かれることもなかったから、正直"普通"に誰かを好きになるのって、すごいなって思う。
ほとんどの人間が、当たり前にできること。
ぼくはまだそれを、よくわかってない。