だから本当にこの人は……っ!!

こうなると分かっていたから咲ちゃんにこの場にいて欲しかったのに。でもこうなるってわかっていた時点で、それがまつりの言う"期待"なのだとしたら。



「恥ずかしい、から、だめ……」



手で顔を覆う。

綺麗な顔で迫られるとどうにもドギマギしてしまうから困る。別にまつりのことを好きなわけじゃないのに。



「……これでも優しくしてやってるつもりだけどな」



離れてくれたのを空気で察して、ゆっくりと手を退ける。

まだ顔が、熱い。すこし離れたところから「ほら」と手を差し伸べていつの間にか倒れ掛けだったわたしの身体を起こしてくれるあたり、優しいのだとはわかっているけれど。



「"みんなの前"では、だめなんだろ?」



ああ、うん、なんか前にそんなこと言った気がするわ。

稜くんのお誕生日のときだっけ?




……って、そう。それよ。

わたしが話したかったのはそっちの件なのよ。



「稜くんと咲ちゃんって、兄弟だったのね」



「……咲耶から聞いたんだな」



「うん。あなたがふたりのこと救ったって」



髪を耳に掛けながら言えば、彼はすこし眉間を寄せて。

「べつに救ってねえよ」とわたしに返す。



「ただのガキに救えるもんじゃねえ。

でも俺が、稜介とあのまま呆気なく終わっていくのはどうなのかと思っただけだ。環境が原因ならともかく、別の人間に差し向けられたことに納得がいかなかった。……その為には咲耶も巻き込むしか無かった」



「だけどあなたの考えにみんな賛同してた。

優理が稜くんに頭突きしたのも、左助さんが稜くんがもどってくるまで幹部候補を発表しなかったのも」