「こんな時間に、何やってんの?」



わたしが越と出会ったのは、中学2年生の時だった。

パーカーのフードを深く被って、マスクで顔を半分隠して。夜中の繁華街にいたわたしは、その声にぴくりと肩を震わせた。



真夏にこんな変な格好をしてる人に、普通は話しかけたくないと思う。

まさか警察?とおそるおそる顔を上げて、思わず息を呑んだ。



「、」



シルバー……いや、透き通りすぎてもはや白みたいな。

白銀の細い髪に、細身の長身。美しさの化身みたいなその男は、かがみ込むわたしを真っ直ぐ見下ろしてる。



「シカト?」



薄くピンク色をしたくちびるが、その美しさとは裏腹な冷たい言葉を放つ。

ハッとして「いえ」と否定するけれど、暑さとは別の理由で汗が流れるのを感じた。




「どうして、声を……?」



「はあ? だってお前、学生だろ?

高校……いや、下手したら中学生じゃないの?」



「そう、ですけど、」



「いま何時か知ってる? 夜中の2時。

とっくに補導時間超えちゃってんの。別にお前が補導とかされようとどうでもいいけど、変な男とかに捕まってもし暴行でも受けたら?」



「、」



「まあ正直お前が男にナニされようと、俺にはまっったく関係ないけど。

迷惑なんだよね、俺らのナワバリでトラブル起きんの」



俺らのナワバリ……?