快斗はバカ正直って言葉が似合うような真っすぐさだけど、雫ちゃんはそれに似ているようで似ていない性格をしていると思う。

けれどその純粋さに絆されてしまいそうなことも事実で、心の中だけでため息をついた。



扉が開くと、色を変える瞳。

澄んだそれが美しいと思える理由もわかる。



今なら彼女が容姿だけじゃなく中身ごと惹かれるような人間であると理解できるけど、最初はその容姿に釣られる男も多いんだろう。

実際、優理なんかは分かりやすくそうだし。



……といっても、あいつは自分から遊び半分に近づいたくせに、まんまと本気になって色々悩んでるみたいだけど。

本人にその気は無い思わせぶりな言葉に、勘違いする男は少なくないはずだ。



俺だって、雫ちゃんに仲間や幼なじみの彼女以上の感情はないけど。

簡単に家に上げてくれるところとか、ちゃんと向き合おうとしてくれるところとか、少なくとも好感を持たれてるんだと思わざるを得ないわけで。



「どうぞ」



鍵を開けて扉を開いた雫ちゃん。

心の中で、まつりに「ごめん」とつぶやいてから。




「ありがとう、雫ちゃん」



その玄関をくぐり、家の中へとお邪魔する。

引っ越してきたことは知っているし、あまり荷物も多くはない方らしい。



女の子にしては、さっぱりした部屋。

そういやご両親は?と今更なことを思うけれど、雫ちゃんがリビングに通してくれたあたり、しばらくは部屋にひとりなんだろう。



「ちょっと待っててね」



「ああ、気遣わなくていいよ。

急に押し掛けることになったの俺だし、」



「ううん。風邪引かれたら心配だから」



一度廊下に消えた彼女が、タオルを手に戻ってくる。

気になるほども濡れてないのに、心配性というか、世話好きというか。