箱から1本出したタバコに火をつける。

稜介にチクられたら後で口うるさく言われるのは分かってるが、たぶん、雫はこのことを言わない。



「……そりゃあ、心配はされるだろうけど」



「止められんだろ、フツー」



「じゃあ普通じゃないのね、うちの親は。

心配はするだろうけど、別に止めてこないはずよ」



椅子に座っていた雫が立ち上がり、俺の方へと歩み寄ってくる。

思わず咄嗟に咥えていたタバコを指に持ち替え窓の外へと手を出したのは、副流煙を吸わせるわけにはいかねーから。



そう思った時点で俺はこの女に影響されてるし、優理の言葉を借りるなら、コイツに甘い。

自覚があるからこそ、舌打ちしたくなる。



すぐそばまで歩み寄ってきた雫が、間近で俺を見上げる。

何考えてんのか、マジでわかんねー。いや、そもそも。




「キスでもする?」



そんな思考が、わかってたまるかっての。



「……ンなことしたらまつりがブチ切れんぞ」



「ダメか。

手っ取り早く仲良くなれるかと思ったのに」



「キスで仲良くなれるわけねーだろ」



「そう?

とっても分かりやすい愛情表現じゃない?」



なんでもないような、その表情。

なんかムカつくから、崩してやりたい。