別に、そこにいるだけで姫なんてものは務まる。

人形みたいに大人しく笑ってるだけの女なんて、雫に似合わねーのは確かだけど。



「やりてえならいいけど、

やりたくねえなら好きなことしてていいんだよ~」



「やりたくないように見える?」



「ん? いつも楽しそうに掃除してんなって思う」



「でしょ?」



優理の言う通り、いつも楽しそうに掃除してやがる。

だから誰もそれに口を挟まねーし、普段俺らの中で整理整頓を真面目にやるのは稜介だけなことを考えると、稜介はたぶんマジでありがたいと思ってる。



まつりの横じゃなく、最初に来た時とおなじ優理の隣。

そこで昼飯を広げる雫は、彼岸花の姫って地位をひとりでに確立してる。




「雫。今日の放課後、倉庫来れるか?」



「うん、平気よ?」



「下のヤツらが、

お前と話してみたいって聞かなくてな」



まつりの言う通り、彼岸花の下っ端は守るべきお姫様をめちゃくちゃ気にしてやがる。

だってまつりが自ら姫って認めた女だぜ?



女に興味がなかったことは、メンバーならまず知ってる。

そりゃ、気になっても仕方ねーよな。



「帰りはいつも通り送ってく」



姫にしてから毎日、放課後は雫を家まで送り届けてるまつり。

いくら雫の家が学校から近いって言っても、マジで惚れ込んでんだな。