「そういうことになるな」



「むしろ良かったの?

わたしみたいな女を彼女にしちゃって」



「……気に食わない言い方だな。

"みたいな"って、そんな風に卑下するなよ」



彼の手が、わたしの頬に触れる。

視線を少し持ち上げたら目が合って、舘宮くんが、その距離を詰める。黒く澄んだ瞳は、越と似ても似つかないのに、よく似ている気がした。



「何度でも言うが、

俺は冗談でこんなことは言わない」



「ふふっ。

それじゃまるで、わたしを好きみたいよ?」



応えるように手を首の後ろに回して、目を閉じる。

一度触れるだけじゃ終わらないキスは、何度も角度を変えて、わたしの呼吸を奪う。




「それ以外の何かには、聞こえないだろ」



わずかに、息が漏れる。

距離があるから大声を出さない限りみんなにはわたしたちの様子が伝わってないと思うけれど、隠れた状態でのキスにはすこしだけぞくりとするものがあって。



「雫」



「ん、」



「好きだ」



囁かれたそれは、嘘のない愛の言葉。

否応なしに顔を赤くしたわたしに、くちびるを離した舘宮くんは満足そうに口角を上げる。



計画は順調。

チーム内の姫として潜り込めるし、好意を抱かれているならこれ以上ないほどに好都合。