―6月末

あれからは何もなく平和に時が流れ、長かった梅雨も明けた。


部活は夏の予選に向けて本格的に動いている。


練習試合から得た弱点を克服するため、ノックに精を出す毎日。


エラーする度にトレーニングが増えていくルールになってから、部員の本気度は増している。


傍から見ていると、守備力が向上したのがよくわかる。


「守備上手くなってるよな、皆」


「ね。エラーで失点なんてピッチャーが可哀想だから頑張ってるんだよ皆」


水分補給をしに来た千隼くんと一緒にグラウンドを眺める。


「一昨日の練習試合な…」


呆れたように苦笑いする千隼くん。


その額には大粒の汗が浮かんでいる。


「あれはさすがにマウンド降りたくなった」


練習試合で千隼くんが先発した一昨日。


度重なるエラーで大量10失点。