「ホントにいいの?俺は千紘の大切な人を―」


「いいの。もう迷わない。過去がどうであれ、千隼くんが好き。だから…」


“付き合ってほしい”


そう言う前に、千隼くんの胸に吸い寄せられた。


ぎゅっ…と体温を感じる。


ブレザーよりもずっと温かい。


「いっぱい傷つけてごめんな。もう二度と傷つけないって約束する。だから俺と付き合って?」


耳元で囁くように言われ、胸がトクンっと高鳴る。


この鼓動、千隼くんに伝わっちゃってる…?


「だめ?」


「だ、だめじゃないよ」


そう答えると、抱きしめる力がより強くなった。


「ちょ…千隼くん…っ。誰かに見られたら…」


「いいんだよ」


千隼くんはそう言って離れようとしなかった。


私たち、やっと恋人になれたんだ。


「千隼くん、好き」


「俺も好きだよ」


いつもの優しい声。


久しぶりにこんなに近くで聞いた。


「千紘、顔上げて」


言われるままに上げたその唇に、千隼くんの唇が重なった。


甘く、温かく、そして幸せなキスだった。