「じゃあ私は帰るね。ちゃんと仲直りするんだよ?明日の練習でギクシャクしてたら許さないからね」


俺たちの間に座っていた千紘は、そう言い残して帰っていった。


気まずい沈黙が場を支配する。


「……あいつ、変わったな」


「え?」


沈黙を破ったのは翔吾だった。


「お前が転校してきてから千紘は変わったし、一昨日負けてからもっと変わった」


「…ふーん……」


「今より笑顔が少なかったし、マネの仕事も雑だった。何のためにマネやってんだろうって思ったこともあるし、やる気がないなら辞めろって密かに思ったこともある。それくらい熱意がなかったというかさ」


「…へぇ……」


「そんなアイツが、わざわざ俺たちの仲を取り持ったりするのが意外なんだよな。きっと、千隼と出会って甲子園が現実味を増してって…、でもあと一歩のところで敗れて…。その過程で変わったんだろーよ」


「………」


「………」


話が終わり、再び沈黙が流れる。


だけど、さっきよりは穏やかな沈黙だった。