いったい千隼くんに何が起こったのか。


見てる私には何も分からない。


ただ、1人マウンドに立つ千隼くんは、とても苦しそうだった。


翔吾がマウンドに駆け寄って声をかけても、千隼くんの苦い表情は変わらない。


「あいつ…急にどうしたんだ…?」 


本当に突然だった。


突然、人が変わったようにコントロールが定まらなくなった。


続くバッターにも、一球もストライクに入れることなくフォアボール。


ツーアウトから二者連続四球。


「何やってんだよアイツ…」


「おい千隼!!落ち着け!!」


「がんばれ!!!お前なら大丈夫だから!」


ベンチからは先輩たちが必死に応援してくれている。


きっとその声は千隼くんに届いていない。


監督は、ジッと動かず戦況を見守っている。


今の千隼くんは千隼くんじゃない。


本当にこのままで大丈夫なの…?


「切り替えろ千隼ー!!」


だけど。


またフォアボール。

 
スコアブックを書く手が止まる。