あれは私が高1、三宅先輩が高2のバレンタインデー翌日のことだった。


三宅先輩と加恋先輩が交際していることは校内の人間なら誰でも知っていたが、それでも先輩にチョコを渡す女の子達は大勢いた。


私も義理チョコ?お世話になってますチョコ?なんて口実を付け渡すつもりだったが、結局勇気は出ず。
バレンタイン翌日になっても冷蔵庫にはラッピングされたままのチョコがひっそりと眠ったままだった。


渡せないチョコの運命は私のお腹行き。

なんて思っていた私に突如チャンスが訪れた。

その日、部活のあとにお兄ちゃんが三宅先輩を夕食に誘ったのだ。

私はチョコの存在がバレないうちに部屋へと隠し、お兄ちゃん達と一緒にご飯を食べた。


その後は3人揃ってテーブルの上で課題を広げる。

どうにか先輩と2人きりになるチャンスを作ってチョコを渡したい。

そう思っているうちに、刻々と過ぎていく時間。



「あ、もうこんな時間か」

課題に取り掛かること1時間、スマホを見ながら三宅先輩がそう口にした。


「俺、そろそろ帰るわ」

「おー」


え、もう帰っちゃうの?

だ、だめ。

まだ、チョコ渡せてないし。


どう言って渡すかだって、決まっていない。