「奈子?」

「えっ、あ、はい」

「俺達ゲームするけど一緒にやる?」


キッチンで3人分のジュースをコップに注いでいると、リビングの方からコントローラー片手に先輩が話しかけてきた。



「あー……大丈夫です。勉強するんで」


最後に3人でゲームをしたのはいつだったっけ。


そんなことを考えても仕方ないのに、先輩とお兄ちゃんがリビングにいると懐かしい光景が目に浮かぶ。


「大学受かったのにまだ勉強するのかよ」


「私はお兄ちゃんみたいに賢くないから」

私はそう言いながらテーブルに2人分のジュースを置き、自分の部屋へと退散した。

勉強なんて嘘。

そんなものはもう嫌ってほどやった。


着替えもせず机に顔を伏せていると静寂の中、コンコンとドアをノックする音が鳴り響いた。



「はい」


顔を上げ返事をするとガチャとドアが開き、先輩が姿を見せる。



「これ、返し忘れてたから」

その手には今日私が先輩に貸したシャーペンと消しゴムが握られていた。