「三宅先輩って1年の頃からエースだったんだって」

「この前、挨拶したら手振ってくれたの」


同級生の間でも三宅先輩の話題は絶えず、先輩が急に遠くに行ってしまったような気がしていた。

だけど、当の本人は何も変わらず校内で会うたびに「奈子」と声をかけてくれた。

それは、私がお兄ちゃんの妹だから。


そう分かっていても、喜ばずにはいられなかった。


先輩を好きな気持ちは益々大きくなり、私はついに告白する覚悟を決めたのだ。


もう、私も先輩と同じ高校生。

友達の妹じゃなくて、三宅先輩の彼女になりたい。



…………そう思った直後だった。


先輩に彼女ができたのは。


相手は学校のマドンナで3秒見つめられれば誰もが恋に落ちてしまうと噂の加恋(かれん)先輩。

人気者同士の交際はすぐに学校中に広まった。




それでも先輩を想う気持ちは消えなくて、私はひっそりと報われない片想いを続けていた。


だけど、あの日それすらも許されなくなったのだ。