「ごめん。遅くなって」
奈子とは違う、甘い香水の匂い。
なんて無意識のうちに奈子と目の前にいる加恋を比べてしまう。
そんなことに気づいたって、なんの意味もないのに。
「巧の制服姿って久々に見た。なんだか不思議ね」
放課後、制服姿のまま現れた俺を見て加恋がそうつぶやく。
「やっと卒業だよ」
「少し早いけどおめでとう」
「ありがとう」
今更、会ったところで話すことなんて何もない。
そう思っていたが、加恋との会話は意外にも盛り上がった。
元同級生達の今の様子や昨年の加恋や悟の卒業式の話。
同級生だったからこそ話せる内容。
もし、今本当に加恋からよりを戻そうと言われたら俺はなんて返事を返すのだろう。
そんなことを思っていると目の前に小さな箱が置かれた。
「今日はこれを巧に渡すために来たの」
その箱は包装紙に包まれていたようだが、テープの部分は剥がされていて一度開けたような跡があった。
俺へのプレゼント、というわけではなさそうだ。



